池の畔で迎えたやり取り
監督真中が畠山を落とし、試合も落とし勢いを見せず惨敗だった
どこからか聞こえる「もっとお金が欲しいなぁ！」「よろしくね山田君！」の声
無音の水の中、普通の畠山は独り池の底で泣いていた
山賊で手にした栄冠、喜び、感動、そして何より信頼できる仲間・・・
それを今の普通の畠山で得ることは殆ど不可能と言ってよかった
「ゴボゴボ」普通の畠山は涙を流し続けた
どれくらい経ったろうか、普通の畠山ははっと目覚めた
どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、冷たい水の感覚が現実に引き戻した
「ゴボゴボ、ゴボゴボゴボゴボ」普通の畠山は苦笑しながら呟いた
立ち上がって伸びをした時、普通の畠山はふと気付いた

「ゴボゴボ？ゴボゴボ・・・？」
普通の畠山が目にしたのは、外野席まで埋めつくさんばかりの綺麗な畠山だった
千切れそうなほどに旗が振られ、地鳴りのようにベイスターズの応援歌が響いていた
どういうことか分からずに呆然とする普通の畠山の背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた
「ああ！畠山を池に落としてしまった！」声の方に振り返った普通の畠山は目を疑った
「ゴ・・・ゴボゴボ？」 　「あなたが落としたのは金の畠山ですか？それとも銀の畠山ですか？」
「ゴボゴボ？」 　「もっとお金が欲しいなぁ！」
「ゴボゴボ・・・」 　普通の畠山は半分パニックになりながらスコアボードを見上げた
１番：山田　２番：今永　３番：綺麗な畠山　４番：畠山　５番：熊原　６番：内川　７番：石田　８番：山崎　９番：原樹里
暫時、唖然としていた普通の畠山だったが、全てを理解した時、もはや彼の心には雲ひとつ無かった
「ゴボ・・・ゴボゴボ！」
山田からグラブを受け取り、グラウンドへ全力疾走する普通の畠山、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった・・・

翌日、池の底で冷たくなっている畠山が発見され、吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った