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1: 名無しさん@おーぷん 2018/03/03(土)18:05:12 ID:YNj
もう、甲子園でのあの試合について話す人は居なかった。
”彼”の話も、みんな僕を悲しませまいと思っているのか、不思議に思えるほどいつもの一日が過ぎようとしている。
最初はそう思っていたけど、本当はそうじゃなかった。
みんな、消してしまっている。”彼”のことを、すべて。
僕も憶えているはずなのに、忘れちゃいけないのに、名前を呼べない。

大谷。今日は、ありがとうな。

そういわれたことだけが鮮明に残り、あとの記憶は全て漠然としたものだった。
ゆっくり、その声がどんなものだったかも忘れていく。
アイジンオーヤマを始末したときの肉を切る感触と同じように。
誰も”彼”が居なくなる事を悲しまないだろう。最初からそんな人間は居なかったのだから。
”彼”にかけた言葉も、”彼”にした仕打ちも、最初から無かったことになる。
仕方ないと、僕も思っていた。でも、悲しくてたまらなかった。
”彼”の生涯が、消えてしまうのが。

大谷・・・なんでなん・・・?

途端に思い出した、その光景。
”彼”の手首を切り、口を付ける。
溢れるものを飲み込む。零れたそれがぱしゃりと絨毯を汚してゆく。
好きなだけ愛した後に、首筋にその刃を這わせた。
大洋を泳ぐ鯨が潮吹きをするかのように溢れるさっきよりも赤いそれを飲み続ける。

あ・・・あ・・・。

虚ろになった”彼”の瞼とともに力なく墜ちた腕をゆっくりと持ち上げる。

藤浪くん。僕と、一つになろう・・・?

ぼくは、はをたてた。

・・・思い出した。思い出したよ、藤浪くん。
とくとくと脈打つ右手首、あのときと同じようにはをもういちど僕は立てた。

5: 名無しさん@おーぷん 2018/03/04(日)01:29:48 ID:ria
感動した

引用元: http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/livejupiter/1520067912/