yuusya_game (6)


1: 風吹けば名無し 2019/12/09(月) 22:00:37.705 ID:qqTV5dGy0
怪物「ガアアッ!」

ザシュッ!

勇者「ぐあっ……!」

戦士「勇者、ステーキだ!」

よく焼けた、ぶ厚いステーキが勇者に手渡される。

勇者「ありがとう!」ガブッ

すかさず肉にむしゃぶりつき、瞬く間に完食する。

勇者「よし、回復!」シャキーンッ

4: 風吹けば名無し 2019/12/09(月) 22:03:59.777 ID:qqTV5dGy0
土人形「ウガアッ!」

ドゴッ!

戦士「くっ、俺にもなんかくれ!」

女魔法使い「カレーライスよ!」

皿に盛られたカレーライスが、戦士の手に届く。

そのとたん、戦場はカレーの匂いに包まれた。

戦士「よっしゃ!」モグモグ

戦士「辛っ! 水ないか!?」

女魔法使い「ないわ、我慢して!」

戦士「まぁいいや、おかげで回復できた!」シャキーンッ

6: 風吹けば名無し 2019/12/09(月) 22:06:53.765 ID:qqTV5dGy0
女魔法使い「ああ……魔力切れ、どうしよう!」

女魔法使い「魔力回復にはジュースがいいのよね~」

袋からグレープジュースを取り出すと、それを一気に飲み干す。

女魔法使い「さあ、覚悟なさい!」



女僧侶「くっ、私も傷を……!」

女僧侶「大した傷ではないので、お菓子で……」

チョコレートケーキにかぶりつく。

勇者「いけるか!?」

女僧侶「ふう、もう大丈夫です!」



さて、どうしてこうなったのかというと――

7: 風吹けば名無し 2019/12/09(月) 22:08:08.232 ID:Y5flLCgkr
たまに食い物が異常に優秀なゲームあるよな

9: 風吹けば名無し 2019/12/09(月) 22:09:28.394 ID:qqTV5dGy0
――

勇者「うーん……」

戦士「どうした、勇者?」

勇者「この市販の回復薬、イマイチ頼りないんだよな」

戦士「たしかに……これからの戦いで使うには心もとない性能だよな」

女魔法使い「薬草も今の戦いじゃ焼け石に水って感じだわ」

女僧侶「でしたら、私が回復魔法を唱えれば……」

勇者「いや、僧侶には回復魔法を唱える暇があったら、補助魔法をバンバンかけて欲しい」

勇者「これからますます戦いは厳しくなるだろうし……」

戦士「できれば単純な体力回復は、魔法じゃなくアイテムで済ませたいよな」

11: 風吹けば名無し 2019/12/09(月) 22:12:13.060 ID:qqTV5dGy0
勇者「俺、ふと思ったんだけど」

戦士「なんだ?」

勇者「もしかして、下手な薬より、食べ物の方が回復アイテムとして優秀じゃないか?」

戦士「たしかに……!」

女魔法使い「こないだケーキ食べたら、傷がたちまち回復したわ」

女僧侶「魔力は飲み物で回復できたりしますしね」

勇者「……」

勇者「よし決まりだ! これから俺たちは、回復には食べ物や飲み物を使うことにする!」

あまりに思い切った決断であった。

12: 風吹けば名無し 2019/12/09(月) 22:13:54.052 ID:OWe/izkEa
荷物が物凄い量になるぞ
パーティー以外に荷物持ちがいるな

13: 風吹けば名無し 2019/12/09(月) 22:15:22.701 ID:qqTV5dGy0
もちろん、最初のうちはうまくいかなかった。

ズバッ!

戦士「ぐああっ……!」

勇者「戦士!」

戦士「自分で回復する! なんか食い物くれ!」

勇者「えぇと……食べ物はラーメンしかない」

戦士「マジ?」

勇者「マジ」

戦士「ふぅ~、ふぅ~、あちっ、あちっ! ――く、食えねえ!」

勇者「早く食え! 魔物が襲ってくるぞ!」

魔物「グオオオオオオオッ!」

15: 風吹けば名無し 2019/12/09(月) 22:18:14.913 ID:qqTV5dGy0
女僧侶「どうぞ、リンゴジュースです。全快の半分ぐらい魔力回復できるはずです」

女魔法使い「……ありがと」

女魔法使い「あー……もうお腹チャプチャプだわ」

女僧侶「前の街で、リンゴジュースばかり買い溜めしたのは失敗でしたね……」

女魔法使い「いくら性能がいいといってもね……今日これで20杯目だもの」



勇者「うっ……」

戦士「どうした、勇者?」

勇者「食べながら動きまくったから、吐き気が……」

戦士「わっ、あっちの茂み行ってこい!」

オエエエッ…

17: 風吹けば名無し 2019/12/09(月) 22:21:58.819 ID:qqTV5dGy0
しかし、人間の適応能力とは恐ろしいものである。

大カマキリ「キシャアアアアアッ!」

大カマキリ「シャッ!」ブンッ

勇者「よっ」モグモグ

大カマキリ「シャッ!」ブオンッ

勇者「ほっ」モグモグ

鋭いカマを掻い潜りながら、ステーキを食す。

勇者「よし、回復! 一刀両断ッ!」ザシュッ!

大カマキリ「ギャアッ……!」ドチャッ

19: 風吹けば名無し 2019/12/09(月) 22:24:16.554 ID:qqTV5dGy0
戦士「骨付き肉食って回復だ!」ムシャッ

巨大植物「グオオオオオッ!」ニュルニュルニュル

戦士「……ん、この肉」ヒョイッ

女魔法使い「どうしたの?」

戦士「焼き加減がイマイチだな……ちょっと火で焼いてくれねえか?」

女魔法使い「分かったわ!」ボッ

戦士「サンキュー!」ハグハグ

女魔法使い「ついでにこいつも燃やしとこっと」ボッ

巨大植物「ギエエ……!」メラメラ…

21: 風吹けば名無し 2019/12/09(月) 22:27:16.296 ID:qqTV5dGy0
ドゴォォォォォンッ!

女魔法使い「ふぅ、ふぅ、ふぅ……全魔力使っちゃったわ」

女僧侶「私もです……」

勇者「じゃあ二人とも、いっぱい飲み物あるから飲んで回復してくれ」

女魔法使い「はーい!」

女僧侶「いただきます!」

グビッ グビッ グビグビッ

大量のお茶やジュースを苦もなく消費する女子二人。

22: 風吹けば名無し 2019/12/09(月) 22:30:18.476 ID:qqTV5dGy0
ズルルッ

勇者「……む、このラーメン」

女僧侶「どうしました、勇者さん?」

勇者「固さが足りないから、防御力を上げてくれない?」

女僧侶「分かりました!」パァァァ…

勇者「お、いい固さになった!」ズルズルッ

中級悪魔「戦闘中にメシ食ってんじゃねえ!」

勇者「戦闘中じゃない、食事中だ!」ズバッ!

中級悪魔「ぐわああっ……!」

23: 風吹けば名無し 2019/12/09(月) 22:31:03.886 ID:bZwaZC5Y0
なるほど

24: 風吹けば名無し 2019/12/09(月) 22:32:36.788 ID:3IY7QfMC0
麺の防御力て

25: 風吹けば名無し 2019/12/09(月) 22:34:18.053 ID:qqTV5dGy0
しかし、そんな四人の前に――

勇者「……お前たちは!」

炎魔人「勇者ども、焼き尽くしてくれる!」

風魔人「フッ……我が風の前に踊り狂うがいい」

水魔人「ホッホッホ、あなた方は水の底に沈めてあげましょう」

土魔人「……埋めてやる」



ついに“四天王”が立ちはだかった。

26: 風吹けば名無し 2019/12/09(月) 22:37:23.072 ID:qqTV5dGy0
炎魔人「ゆくぞォ!」

炎魔人「地獄の火炎を受けてみよ!」

ゴォォォォォッ!

勇者「こ、この炎はッ!」

炎魔人「フハハハ、焼かれるがいい!」

勇者「肉焼くのにちょうどいい!」

戦士「ウェルダンのステーキを楽しめるぜ!」

炎魔人「なんだとォ!?」

29: 風吹けば名無し 2019/12/09(月) 22:40:15.307 ID:qqTV5dGy0
風魔人「風よ……奴らを切り刻め!」

無数の刃が飛んでいく。

ズババババッ!

女魔法使い「おかげでキャベツの千切りが楽にできたわ。ありがと」

風魔人「ええっ!?」

女僧侶「さあ、トンカツに添えて食事にしましょう!」

勇者&戦士「はーいっ!」

風魔人「こんなはずじゃ……」

31: 風吹けば名無し 2019/12/09(月) 22:43:18.856 ID:qqTV5dGy0
水魔人「ええい、まとめて水で呑み込んであげましょう!」

ザバァァァァァッ!!!

大量の水が勇者たちを呑み込む。

水魔人「終わりましたね……あっけない」

水魔人「む!?」

勇者「流しそうめんうめえ!」ズルズルッ

戦士「自分が流れる流しそうめんなんて斬新だな!」ズゾゾッ

女魔法使い「さっぱりしておいしい~!」チュルルッ

女僧侶「いくらでも食べられますね!」チュルルルッ

水魔人「渦の中で……そうめん食ってる……」

33: 風吹けば名無し 2019/12/09(月) 22:46:16.237 ID:qqTV5dGy0
土魔人「……隆起せよ」

ゴゴゴゴゴゴ……!

地面が隆起し、勇者たちを襲う。

勇者「……ん! 土の中にイモがあるぞ! 食べよう!」

女魔法使い「私が焼くわ!」メラメラ…

女僧侶「防御力低下させて柔らかくします!」パァァァ…

戦士「いただきまーす!」

モグモグ… ムシャムシャ…

土魔人「……どうして」

35: 風吹けば名無し 2019/12/09(月) 22:47:59.584 ID:xUZAfDUc0
食べ物にバフかけるの笑う

36: 風吹けば名無し 2019/12/09(月) 22:49:06.423 ID:qqTV5dGy0
炎魔人「ダ、ダメだ……!」

風魔人「いくら攻撃しても、食事に利用され……」

水魔人「しかも回復されて、しまう……」

土魔人「ま、参った……」

ドサササッ…

四天王は敗北を認めた。

勇者「激しい戦いだった……」

戦士「だが、満腹にはなったな」ゲフッ

女魔法使い「残る敵はいよいよ魔王だけね」

女僧侶「いきましょう、魔王城に!」

38: 風吹けば名無し 2019/12/09(月) 22:53:17.314 ID:qqTV5dGy0
ゴゴゴゴゴ…

魔王「よくぞここまで来た……勇者ども」

魔王「さあ、来るがいい! 地獄の底に叩き落としてくれようぞ!」

勇者「みんな、準備はいいか?」

勇者「ナイフとフォークは一番外側のから取っていくんだ」サッ

勇者「食事しながら、優雅に魔王を倒そうじゃないか」

戦士「おう!」

女魔法使い「ええ!」

女僧侶「はい!」

魔王「……!」

魔王「おのれ……舐めるなぁっ!!!」

41: 風吹けば名無し 2019/12/09(月) 22:56:24.340 ID:qqTV5dGy0
魔王「喰らえい! 暗黒の雷!!!」

ズガガァァァンッ!

勇者「む、このソテーは美味だな」

戦士「ムニエルもいけるぜ!」

女魔法使い「スープもほんのり甘くておいしいわ」

女僧侶「このサラダもとっても新鮮です!」

魔王「な……なんだとォ!? 紙一重でかわしている!」

43: 風吹けば名無し 2019/12/09(月) 22:59:16.637 ID:qqTV5dGy0
魔王「我が拳を受けよッ!!!」

ドゴォンッ!

勇者「……ッ!」

ダメージを受けても、勇者は平然と食事をする。

勇者「うん、うまい」モグモグ

戦士「この水うめえ!」グビグビ

女僧侶「ダメですよ、それは指を洗うための水です!」

戦士「あ、そうなの?」

魔王「くっ……!」

魔王(こいつら……本当に戦いながらフルコースを楽しんでおる!)

44: 風吹けば名無し 2019/12/09(月) 23:01:58.537 ID:qqTV5dGy0
勇者「ふぅ、食った食った」

勇者「さて、そろそろ……腹ごなしといきますか」クルッ

三人「おう!!!」

魔王「えっ……!?」

勇者「いくぞ、魔王ッ!」

勇者パーティーはすっかり体力満タンになっていた。

46: 風吹けば名無し 2019/12/09(月) 23:05:17.138 ID:qqTV5dGy0
女僧侶「皆さんの能力を最大限上昇させます!」パァァァァァッ

女魔法使い「全魔力を叩き込むわッ!」

ドゴォォォォォォンッ!

戦士「フルパワー斬りィィィッ!」

ズバシュッ!

勇者「うおおおおおおおおおおおおっ! 一刀百断ッ!」

ザンッ!!!

魔王「ぐはぁぁぁぁぁっ!!!」

魔王「こんな……バカ、な……」

会心の一撃を受け、魔王は消滅した。



勇者「朝飯前……いや、夕飯後だったな」

47: 風吹けば名無し 2019/12/09(月) 23:08:49.104 ID:qqTV5dGy0
魔王を倒した勇者たちはめでたく凱旋を果たす。



ワァァァ…… ワァァァ……

「おおっ、帰ってきた!」

「さっすが勇者様だぜ!」

「ありがとー!」



王「よくやってくれた、勇者よ。貴公の名は永遠に残るだろう」

王「今夜は王国の最高級料理の数々を用意した。ぜひ仲間たちと共に楽しんでくれたまえ」

勇者「喜んでいただきます!」

48: 風吹けば名無し 2019/12/09(月) 23:13:12.545 ID:qqTV5dGy0
勇者「うん、うまい」ゴゴゴ…

戦士「うめえぜ……うますぎて、つい暴れたくなっちまう」メキメキ…

女魔法使い「おいしすぎて……魔力が暴発しそう」ズオオオオ…

女僧侶「ダメですよ、皆さん……戦いはもう終わったんですから……」ミシミシ…

ゴゴゴゴゴ…

王「……!」

王「あの……なんでみんなそんなに殺気立ってるの?」

勇者「すいません、俺たち食事をする時はだいたい命のやり取りをしてたもので、つい……」

王(いったいどんな冒険してきたんだ……!?)






― END ―

49: 風吹けば名無し 2019/12/09(月) 23:19:05.082 ID:SvHzdDY1r

体に染み付いちゃったかw

引用元: http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1575896437/