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1: 風吹けば名無し 19/12/31(火)14:52:38 ID:Ddp

彡(゚)(゚)「おう、原ちゃん、急に呼び出して何の用や?」

(´・ω・`)「勇者のお兄ちゃんさ。魔王討伐の任を引き受けてからも自宅に引きこもってるらしいね」

(´・ω・`)「さっさと旅立ってレベル上げして、魔王をぶっ倒してよ」

彡(-)(-)「ワイにはワイの考えがあるんや」

(`・ω・)「まさか、魔王にビビっちゃった?」

2: 風吹けば名無し 19/12/31(火)14:53:05 ID:Ddp

彡(●)(●)「おいおいおい、原ちゃん、ワイはこれでも勇者やで」

彡(●)(●)「仮に魔王が天を裂き、地を揺らす神々に等しい存在だろうと、ワイが魔王を恐れることなどないわ」

(´・ω・`)「頼もしいことを言ってくれるじゃん。じゃあ、何で引きこもってるの?」

彡(゚)(^)「へへへ、聞いて驚くなや。実はな、ワイは低レベルでも魔王を倒しうる方法を考えていたんや」

(´・ω・`)「低レベルで魔王を倒す方法?」

3: 風吹けば名無し 19/12/31(火)14:53:35 ID:Ddp


彡(^)(^)「せや」

彡(゚)(゚)「それはそうと、原ちゃん。ワイも糞忙しいのに、せっかく呼び出されたんやから、魔王討伐後のご褒美について話しておきたいんやが」

(´・ω・`)「えぇ……、その言いぶりだと、策は既に整っているみたいだけど」

彡(゚)(゚)「そら、とっくに段取りはすんどるで。それでご褒美についてなんやけど、プロ野球チップスを箱買い……」

(´・ω・`)「ちょっと待ってよお兄ちゃん。世の中にはね、『取らぬ狸の皮算用』なんて言葉もあるんだ」

4: 風吹けば名無し 19/12/31(火)14:54:56 ID:Ddp

(´・ω・`)「まずは、お兄ちゃんの考えた策とやらを聞かせてよ」

彡(゚)(゚)「いや、原ちゃん。ワイが欲しいのはタヌキやなくてプロ野球チップs」

(´・ω・`)「あ、こいつ、意味わかってねえな」

(`・ω・) 「『取らぬ狸の皮算用』ってのは、未だ旅にも出てないのにご褒美の話をする。お兄ちゃんの様な阿呆を例えたことわざだよ」

6: 風吹けば名無し 19/12/31(火)14:55:15 ID:Ddp
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7: 風吹けば名無し 19/12/31(火)14:55:33 ID:Ddp

彡(^)(^)「しかし、そんなことわざがあるとは知らんかったで」

彡(^)(^)「ワイに置き換えれば『取らぬ魔王のプロ野球チップス算用』ってとこやな」

(´;ω;`)「ああもうそれでいいから、早く策ってのを教えてよ」

彡(゚)(^)「それじゃあ、サクサクっと策を教えたるわ」

(´・ω・`)「うわ、くっそつまんねえ(早く教えてよ)」

8: 風吹けば名無し 19/12/31(火)14:55:54 ID:Ddp

彡(゚)(゚)「まず一つ目の策やけど、これは初級水魔法のウォーターを使うんや」

(´・ω・`)「ほぅ、レベル1でも使える『ウォーター』だけでか?」

彡(゚)(゚)「そうそこが肝なんや、ワイの策は全て低レベルでも達成可能なんや」

彡(゚)(゚)「つまり、魔王城にたどり着けさえすれば、明日にでも魔王の首を取ってこれるで」

(´・ω・`)「それで『ウォーター』だけで、どうやって魔王を倒すの?」

9: 風吹けば名無し 19/12/31(火)14:56:15 ID:Ddp

彡(゚)(^)「それはやな。本来の『ウォーター』は、掌から水を出す魔法なんやが、これをチョイといじくるんや」

(´・ω・)「つまり?」

彡(^)(^)「つまり、水の発生場所を掌からではなく魔王の口の中に指定することで、魔王を地上で溺死させるって寸法や」

(´・ω・`)「ははあ、無理やり水を飲ませ続けるってわけだね」

(´・ω・`)「お兄ちゃん、えげつない事を考えるなあ……でも、いい考えだと思うよ」

10: 風吹けば名無し 19/12/31(火)14:56:38 ID:Ddp

彡(゚)(゚)「他にもあってやな。魔王の体の中に、初級火魔法の『ファイアー』をぶち込むとか」

彡(゚)(゚)「初級移動魔法の『テレポート』で、魔王の腹の中を転移先に指定して、奴の腹を内側から破裂させるとか」

彡(゚)(^)「こんな感じで百通りぐらいの策を用意したで」

(´・ω・`)「ふうむ、意外に実現できそうな策だね」

(´・ω・`)「勇者としてはチョットあれだけど、お兄ちゃんなりに考え抜いたんだね。すごいよ、お兄ちゃん!」

11: 風吹けば名無し 19/12/31(火)14:57:04 ID:Ddp

彡(^)(^)「サンガツやで」

(´・ω・`)「でも、魔王は強いからなあ。お兄ちゃんの作戦が通用すればいいけど……」

彡(-)(-)「はあ~やっぱそう思うか?」

(´・ω・`)「ということは、お兄ちゃんも?」

彡(゚)(゚)「そうやな。実は、危惧していることがいくつかあるんや」

12: 風吹けば名無し 19/12/31(火)14:57:19 ID:Ddp

彡(゚)(゚)「例えば、魔王がクジラ並みに息が続くとなるとワイの溺死作戦は失敗やし」

彡(゚)(゚)「他にも魔王の炎耐性が想像以上なら、仮に身体の内側から焼いたとしてもダメージがないかもしれん」

(´・ω・`)「うんうん」

彡(゚)(゚)「それに、もし奴の胃袋が異次元空間につながってたりしたら」

彡(゚)(゚)「ワイが魔王の腹の中にテレポートした瞬間に、どこぞと知れぬ世界へ飛ばされてしまうかもしれん」

13: 風吹けば名無し 19/12/31(火)14:57:54 ID:Ddp

(´・ω・`)「ははは、流石にそんな馬鹿な話はないでしょ」

(´・ω・`)「いや、ごめんねお兄ちゃん。どうやら僕の言葉で少しお兄ちゃんの不安を煽ってしまったようだね」

(`・ω・´)「なあに、心配することは無いよ。お兄ちゃんは魔王を倒す策を百通りも考えたんだ。どれか一つは必ず効くよ!」

彡(゚)(゚)「しかしなぁ……」

(´・ω・`)「お兄ちゃん『杞憂』という言葉を知っているかい?」

14: 風吹けば名無し 19/12/31(火)14:58:12 ID:Ddp

彡(゚)(゚)「『きゆう』? なんやそれ?」

(´・ω・`)「杞憂ってのは、空が落ちてくることを心配した男の寓話から出来た言葉でね」

彡()()「へ、そ、空が落ちてくるんか?」

(´・ω・`)「ははは、そうじゃないさ。要は、落ちてくるはずもない空を見上げ無駄に心配している男のように」

(´・ω・`)「魔王の胃袋が異次元につながっていたらどうしようと宣う、今のお兄ちゃんを表す言葉さ」

15: 風吹けば名無し 19/12/31(火)14:58:37 ID:Ddp


(`・ω・´) 「つまり、取り越し苦労ってわけだよ」

彡(゚)(゚)「じゃあ、空が落ちてくるってのは……?」

(´・ω・`)「もちろん、空は落ちてこないし、魔王の胃袋が異次元につながってることもないさ」

(´・ω・`)「お兄ちゃんは、余計な心配をしてないで、さっさと魔王の首をとっておいでよ」

(´・ω・`)「長い間引きこもっていたんだから、その時間ロスを一気に取り返してきなよ」

16: 風吹けば名無し 19/12/31(火)14:59:10 ID:Ddp

彡(゚)(゚)「いや、原ちゃん。ちょっと待ってくれや」

(´・ω・`)「ん? なにか問題があるの?」

彡(゚)(゚)「実はな、ワイの作戦には少し問題があるんや」

(´・ω・`)「と、言うと?」

彡(゚)(゚)「ワイの作戦は、どれも魔法の発生場所をいじくることで成立しとるんやけど」

17: 風吹けば名無し 19/12/31(火)14:59:18 ID:Ddp

彡(゚)(゚)「実は、その魔法の発生場所を変えるってのが難しくてな」

(´・ω・`)「うん」

彡(゚)(゚)「王立魔道学院の偉い先生に聞いたら、それを実現するには魔法レベル80ぐらいは必要だって言わたんや」

(´・ω・`)「……」

彡(゚)(゚)「だから、魔王城に行く前にちょっとレベル上げをさせてくれや」

18: 風吹けば名無し 19/12/31(火)14:59:45 ID:Ddp

(´・ω・`)「……それなら、素直に最初からレベル上げをしておけば良かったんじゃないか!」

彡(゚)(^)「計算上だと完璧やと思ったんやがなあ」

(´・ω・`)「あのねえ……そういう、頭の中で考えただけの役に立たない考えを『机上の空論』って言うんだよ」

彡(゚)(゚)「はあ、またことわざかい」

19: 風吹けば名無し 19/12/31(火)14:59:56 ID:Ddp


(´・ω・`)「……まあ、この話はもういいよ」

彡(゚)(゚)「すまんな」

(´・ω・`)「まったく、お兄ちゃんと話していると先が思いやられるよ……」

彡(゚)(゚)「そういえば、風のうわさに魔王もその『机上の空論』に凝ってるって聞いたで」

彡(゚)(゚)「噂を聞いたときは、意味が分からんかったが、なるほど、魔王もワイと似たことをやってるやろなあ」

20: 風吹けば名無し 19/12/31(火)15:00:26 ID:Ddp

(´・ω・`)「へえ、魔王が『机上の空論』にねえ……奴がなかなか攻めてこないのもそのせいかもしれないね」

(´・ω・`)「そういえば、この間、街角で偶然会った時も」

(´・ω・`)「勇者であるお兄ちゃんを倒す前からアソコの領土が欲しいだの、新しい城を建てるだのと皮算用をしていたなあ」

(´・ω・`)「勇者と魔王。共に神に選ばれた身、どこか似てるところがあるのかもしれんないね」

彡(゚)(゚)「……ところで、原ちゃん」

21: 風吹けば名無し 19/12/31(火)15:00:43 ID:Ddp

(´・ω・`)「なに、お兄ちゃん?」

彡(((゚)(゚)))「なんか、地面が揺れてやせんか?」ガタガタ

((((´・ω・`))))「じ、地震だ!」


どんがらがっしゃーん

22: 風吹けば名無し 19/12/31(火)15:00:53 ID:Ddp

彡()()「う、うわあ! 空が落ちてきた! 『杞憂』だなんて嘘やないかっ!?」

(´・ω・`)「お兄ちゃん! 落ちてきたのは天井だよ! 空が落ちてくるわけないでしょ!」

(´・ω・`)「ほら! あそこの机を使おう!」

彡(。)(;)「へ!? あの机を使って、ワイに『机上の空論』を考えろって言うんか!?」

彡(。)(;)「でも、こんな極限状態で良い考えなんて思いつくのは無理やで!?」

(´・ω・`)「机の下に隠れようって言ってんだよ! ほら、急いで!」

23: 風吹けば名無し 19/12/31(火)15:01:17 ID:Ddp

~~~それからしばらくして


彡(^)(^)「はあ~、なんとか生き残れたなあ」

(´・ω・`)「あーあ、すっかり天井が崩れちゃったよ。見てよ、城の中なのに空が見えちゃってる」

彡(゚)(゚)「……ん? 原ちゃん、空を見てみ!」

彡(●)(●) 「ほらあそこ、空が裂けて魔王マッマの姿が見えてるで!」

J( 'ー`)し「はあい、久しぶりね原住民ちゃん」

24: 風吹けば名無し 19/12/31(火)15:01:38 ID:Ddp

(´・ω・`)「空に自分の姿を投影しているのかな? ホログラムってやつかな」

彡(゚)(゚)「さっきの地震もマッマがやったんか?」

J( 'ー`)し「そうよ、私が長年研究していた新しい魔法」

J( 'ー`)し「魔王城で最も大きい円卓と、王国各地の空をゲートでつなぎ、魔王城に居ながら各地に隕石魔法を降らせたってわけ」

(´・ω・`)「な、なんともまあ大それたことを」

25: 風吹けば名無し 19/12/31(火)15:01:58 ID:Ddp

彡()()「原ちゃん、だから言ったやないか、奴は机上の空論に凝ってるって!」

(´・ω・`)「えぇっ!? 『机上の空論』って、魔王城の机と、王国各地の空をつなぐ『机上の空』論ってことだったのか」

J( 'ー`)し「ほほう、流石は勇者やきうね。私の目論見を既に知っていたとは」

J( 'ー`)し「それじゃあ、ご褒美に、いま新しく建設中の新・魔王城で王国壊滅パーティーをやるから」

J( 'ー`)し「貴方たちも、ぜひ参加しなさいな」

26: 風吹けば名無し 19/12/31(火)15:02:13 ID:Ddp


(´・ω・`)「馬鹿を言わないで! たかが王城の天井を破ったぐらいで、もう勝利したつもりなの!?」

J( 'ー`)し「馬鹿を言っているのは原住民ちゃん、貴方自身よ。ゲートは王国各地の空とつながっているといったでしょう?」

(´・ω・`)「ま、まさか!?」

J( 'ー`)し「そのまさかよ! 王城の天井どころか、この国の軍事拠点はとっくに壊滅してるってわけ。あ、そうそう先日言っていた領地はもう貰っておいわよ」

J( 'ー`)し「おっと、そろそろゲートが閉じてしまう。お話の続きは、新魔王城でするとしましょう」

27: 風吹けば名無し 19/12/31(火)15:02:25 ID:Ddp

(´;ω;`)「うぅ……」

J( 'ー`)し「新築祝いも兼ねるから、ちゃんとお茶菓子ぐらいは持ってくるのよ」

J( 'ー`)し「私の胃袋は底なしだから、たくさん持ってきてね。それじゃあ、またね」プツン

(´;ω;`)「……ああ、消えちゃった」

(´・ω・`)「勇者やきうよ、もう一刻の猶予もないよ! 早速、魔王城へ向かって魔王の首を打ち落としてきてよ!」

28: 風吹けば名無し 19/12/31(火)15:02:42 ID:Ddp

彡()()「えぇ……」

(´・ω・`)「どうにも歯切れが悪いなあ。まさか魔王にびびっちゃった?」

(`・ω・´) 「天を裂き、地を揺らす神々に等しい存在でも恐れないと言ったのは、お兄ちゃん自身じゃあないか」

彡()()「い、いやな原ちゃん。確かに、そう言ったんやが……」

(´・ω・`)「なら、なにを迷っているんだい」

29: 風吹けば名無し 19/12/31(火)15:02:59 ID:Ddp

彡(。)(;)「手土産のお茶菓子は、どれぐらい持っていけばいいんや……ワイの懐事情じゃあ、ちょっと不安が」

(`・ω・´)「お茶菓子なんて、包みをひとつ持っていけば充分でしょ!」

彡(;)(;)「し、しかし原ちゃん。マッマは、『取らぬ狸の皮算用』も『机上の空論』も現実にやりとげたんやで」

彡(;)(;)「きっとマッマは、ことわざを実現する力を持っているんや」

(´・ω・`)「なんだいなんだい。次は、『杞憂』で空が落ちてくるなんて言わないでよ?」

30: 風吹けば名無し 19/12/31(火)15:03:26 ID:Ddp

彡(。)(;)「いや……」


彡(。)(;)「きっと、魔王の胃袋は異次元につながってるに違えねえ」



おわり

31: 風吹けば名無し 19/12/31(火)15:12:07 ID:bXd
おもしろかったで

32: 風吹けば名無し 19/12/31(火)15:12:52 ID:8tK
おつ

引用元: http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/livejupiter/1577771558/